宮城県涌谷町教育委員会と連携して、
涌谷の江戸時代の景観復元研究に昨年から取り組んでいます。
涌谷は寺社、武家屋敷と優れた近世建築が指定文化財として伝わり、
江戸時代の仙台藩要害の建築文化を伝える好例です。
その一環として、
妙見宮の彩色調査を継続しています。
現在の拝殿は、
元禄期に建造された元本殿が、
享和期に拝殿として転用された来歴をもち、
現本殿と現拝殿で異なる時代様式が併存することになったものです。
素木を主調とした享和期の本殿に対して、
元禄期は江戸時代前期の面影を残すように、
外観にも彩色が施されているのが特色です。
ただし、
さすが元禄期になっているためか、
部材全体を塗装するのではなく、
木肌を主調としながらの板絵、
あるいは絵様の渦・葉といった刻線のみの彩色、
など江戸時代も中期に向かう抑制された彩色です。
仔細に彩色を抽出していくと、
部材や位置関係による彩色計画の規範もありそうです。
現在は、塗装の劣化も進んでおり、
こうした彩色計画の研究は今後の保存修復を考える際にも、
大切な視点かと思っています。